わかってはいたが本当に無頓着であるのだ。
ソルトの事以外に関しては。
例えそれが自分自身の要の事であっても。
それを証拠に当事者である筈の六花は実に呑気に新作フラペチーノに舌鼓を打ち、『そうか、クローンか』なんて楽観発言を繰り返している。
本人がこの調子なのだ。
ソルトが一人で話を深刻化できる筈もなく、それでもヤレヤレと溜め息ばかりは口から勝手に零れ落ちる。
仕方なしに自己ブレイクだとコーヒーを口に運んだタイミング。
「と、いう事は…やっぱりオリジナルはあの人って事になるのかな」
「…………………半透明の女?」
誰に問いかけるでもない、六花自身がただぽつりと漏らしたような独り言。
それでも隣にいるソルトばかりはしっかり拾い上げて、更には瞬時に思考が巡ったのだ。
過去の記憶の回想。
刹那に思い当たったのは幼い六花が語っていたその存在。
答え合わせの様に呟いたその言葉には六花の視線も静かにソルトを向き。
「うん、それ」
「その話も昔から引っかかってたんだが。何者なんだろうってね。幽霊……というよりもそれこそ…魔女の類なんじゃねえかって」
「魔女……だろうねえ」
「ん?そこは断定?何?半透明でもなんか魔法的な物使って見せたとか?」
「いや、そんなもの見るまでもないって言うか」
「へっ?」
「だって、今の僕の姿そのものだったもん。彼女」
「………」
「この成長させた姿なんてまさに生き写しだと思うよ」
「っ……」
「ね?クローン説高まるでしょ?」
いや、ここまで話が深まっても『ねっ?』なんて軽い感覚でいられるのかよ。



