今も言い負かされる形で漏らせるのは苦笑ばかり。
育て方を完全に誤ったななんて思う感覚は恋人というよりお父さん気分に近いだろう。
結局、恋人としても父親としても思春期真っ盛りの破天荒さに迷走するのは変わりないのだが。
でも、まあ、今はお父さんをするより恋人だろう。
そんな結論を結んでしまえばソルトだって初なヘタレではない。
「ま、いい。適当に行くぞ」
愉快な待ち合わせは充分に堪能したし。と、六花の手を絡めとったのはごく自然な無意識の行動。
手を繋ぐ行為にいちいち羞恥する感覚なんて持ち合わせていなければ緊張なんて物もない。
だからソルトとしてはさらりと致した行為であったのだ。
ソルトだけは。
手を繋いでいざ行かんとソルトが一歩を踏み出したのに、ピンッと後ろに張った腕に待ったをかけられる。
六花の手を絡めた方の腕。
つまりはソルトに反して六花は歩みを止めているという事。
当然、今度はなんだ?と呆れ半分に振り返るソルトがいたのだが、呆れた笑みは振り返った一瞬のみ。
次の瞬間には捉えたものにぎょっと表情を強張らせてフリーズしてしまったのだ。
思考も軽く困惑気味。
湯でタコの様に真っ赤な顔でカチンコチンに硬直している六花の姿には。



