そうして視線を走らせれば、今度は肉眼でその光景を捉えることになったのだ。

それでも最初こそ遠目。

多分アレだろうと聴覚を当てに特定した姿は確かに細身で小柄な女の姿。

長い黒髪をふわりと風に遊ばせてどこか近寄りがたい空気を纏いながらソルトがいる方向へ歩いて来るミステリアスな美少女。

そうして、視覚より早く嗅覚が拾い上げる事実には思わず『マジか』なんて苦笑してしまうソルトいるのだ。

甘い甘い誘惑的な匂い。

魔女特有の甘い匂い。

それも間違えようもない自分好みの魔女の匂い。

六花の匂い。

そんな結論を嗅覚でも視覚でも打ち出したタイミング。

今の今までまわりの色めいた視線や囁きには全くの無興味の無表情で歩いていた姿が、ソルトをその視界に収めた刹那に一瞬で満面の笑みを見せて手まで振って存在をアピールしてきたのだ。

「ソールトッ」

ああ、マズイ。

満月の日効果もあって六花の誘惑の毒の強さよ。

いつも以上に甘ったるい匂いもさることながらだ…。

何でまた今日に限ってその大人モードスタイルなんだよ!?

なんて、葛藤はソルトの内々で。

そう、今日に限って。

只でさえ色々な本能が研ぎ澄まされて敏感な日に。

抑制に苦労する日に。

まさかの成長スタイルで六花は出向いたのだ。

この姿は二度目。

一度目には息を飲み、二度目もやはり反応は同じ。

しかも日の下で見るとより肌の白さや身体のラインが際立つものだからして。

これは人目を引くのも当然だ。