Love EaterⅡ



それでも、どうにも全てがままならない。

五感の全てが今だリセットの影響を受けていて、思考も曖昧であれば自立することもおぼつかない。

ソルトの懐に飛び込んではみても次の瞬間には崩れ落ちかけた程に。

当然、ソルトの腕はそんな六花を抱きとめていて。

ようやく自分の存在を認識した姿に「遅えよ」と心にもない不満を囁き優しく頭を撫でてみせる。

そう、六花が自分を忘れる筈がない。

どんな強固な薬を使おうが、術を施したとしても。

そんな事を再確認しながら腕の中の六花を抱きしめ直していた頃合い。

「そう、まさに、それが問題なんですよねえ」

緩み始めていた緊張の糸を張り直すような言葉が空気を震わせ。

安堵に染まっていた双眸には警戒が舞い戻って鋭く相手を見据え直す。

そんな威嚇とも言える眼差しの先には、ヤレヤレと眉尻を下げつつも微笑を浮かべる時雨の姿があり。

この状況でも緩く弧を描く口元とどこか冷静な口調には六花を抱くソルトの腕にも無意識に力が入ってしまう。

一体この後に及んでどういう余裕で冷静でいるのか。

もう、盗られて堪るか。

そんな感覚を研ぎ澄ませ動向に警戒するソルトに反して、時雨と言えば実に呑気な面持ちでソルトと六花を見据えてくるのだ。