そして、今まさにソルトもまたその感覚との背中合わせであるのだ。
同調も同情も出来るが自分がその思いに一歩でも引けを見せてしまえば途端に立場は反転し虚無と後悔の念に沈んでしまう事になる。
失うわけにはいかない。
自分の為にも、六花の為にも。
時雨が夜音を求める執念にソルトが六花を求める執念が負けてはいけないのだ。
引いて堪るか。
あいつは俺の物。
俺が見つけた俺の六花だ。
いや……俺の物でもない。
勿論時雨の物でもない。
あいつは……あいつの物。
六花は六花のもの。
だから、
「あんたがいくら望んでどう呼ぼうがあいつはあいつだ。いくら人格をリセットしようがあいつは夜音なんて女にはならねえ。そんな大人しく誰かの言う事を聞く女じゃねえんだ」
我儘で自己中でどこまでもマイペース。
人の言う事なんか一度だって聞いたためしがない。
そうそう、手に負える女じゃない。
それに…どこまでもストイックに俺馬鹿だ。
「あいつの変態並みの俺への執着を舐めんじゃねえよ」
そうだろう六花?
そう簡単に他者に陥落させられる性質じゃない。
願掛けというよりそれが六花なのだと理解している。
だからこそソルトの双眸は不安に揺れず啖呵を切り、口元は強気に弧を描いて挑むように時雨と六花を見つめるのだ。



