「さすが、魔女の検挙率高いリッカ君ですね。伊達に魔女戦を生き抜いてきてないと言いましょうか。噂通りの瞬発力と攻防のセンスですよ」
緊迫した空気にパンパンと響いた乾いた拍手の音。
その音を辿ればにっこりと微笑む時雨の姿を捉えることになり。
その姿こそソルトが本来滾った感情をぶつけたい本人。
今も連ねられた賞賛の言葉は嫌味でしかなく、自然と奥歯を噛みしめ憤りに顔を歪める程であるのに。
「あんたを信頼してたのに…」
「光栄です。僕もあなたの事を好きでしたよ。真面目で誠実で、不器用でありながら熱血漢で情に深い。…うん、やっぱり嫌いじゃないです」
「ふざけるなっ!昔の女の依り代だ?てめえの事情に六花を巻き込むんじゃねえよっ!あいつは夜音なんて女じゃねえっ!あいつはっ…」
「夜音ですよ。…夜音になってもらわないと困る」
「……あんたの空虚な心には同調もするし同情もするよ」
本当に……同情する。
心底惚れ抜いた相手を失う痛みも虚しさも、時雨ほどでないにしても覚えがある。
当たり前であった存在を突如失った瞬間の虚無や後悔も。
確かに見つめていた目がもう自分を映す事はない。
耳に焼き付いた声が自分を呼ぶことも。
なのに、時間が経てば経つほどそれらは薄れるどころか鮮明で。
いっそ忘れられたらと願う程、願う都度に心を蝕むほど渇望してしまう。
それが永遠ともなればどれ程の苦悶であるのか。
恋い焦がれて、狂い求めて、人としての理にすら背を向け狂気に走るのも理解出来てしまう。



