こんな風に敵意は向けられたくないし、
向けたくない。
そう切に思って見つめて呼びかけているというのに。
「お前……邪魔、」
「っ……」
どこまでも拒絶的な響きの直後には、一瞬でソルトの懐に入り込んでいる六花の姿があり。
次の瞬間には華奢な細腕がソルトの胸をめがけて貫かんとしてきている。
動物的勘。
その手に触れられてはいけないと。
狼の血ゆえの危険予測能力と瞬発力。
ソルトもそれを強みに神父として数多の魔女と対峙してきたのだ。
生と死の隣り合わせの生業。
そんな身に刻まれた経験がソルトをあっさりと見放すような事はなく。
六花の指先が触れるより早く体は防衛に反っており、その動作の延長の勢いで今度はソルトの足が六花の身体を側面から蹴り込んでいたのだがこれまた何の衝撃もない。
迫った時と同様、六花の身はパッとソルトから距離を置いた位置に静かに足を着き、そして未だ情の無い双眸でソルトを敵視して見つめてくる。
闘いたくなんてないのに。
思わず咄嗟に反撃してしまった蹴り一つにも罪悪感がヒシヒシと心を蝕んで痛みすら覚えるのに。
六花と戦いたいんじゃない。
この滾っている感情は六花に対してじゃない。
許せなくて、それでもなんだか遣る瀬無くて。
どう向けるのが正解か未だ分からぬ消化不良のこの感情の矛先は六花ではないのに。
六花の向こうの……。



