「何を言うても無意味…か、」
時雨の狂気に説く言葉など最早ない。
自分も痛みを伴いながら発した百夜の真からの言葉も時雨の病んだ恋情には届く事はなく。
無念だと百夜の口元が苦笑を浮かべたと同時、その姿は事切れる様に崩れ落ちて地面に膝をついてみせる。
「百夜っ!?」
「…なぁに、心配はいらない。ちょいと…この身体に戻ってエネルギー不足なもんでね。貧血みたいなものさ」
どうやら、膝はついたが意識は気丈であるらしく、ヒラヒラと手を振り口元には弧まで描いてはいる。
それでもいつもの様な覇気や余裕などまるでないのだ。
「いつまで虚勢が持つのかと思ってはいましたが。流石に本来の姿では魔力不足のようですね。半端者だった百夜の姿でならその程度の力でままなったでしょうが、本来の魔物となれば話は違います」
「ままならんものだな。今となっては戻らぬ姿の方が恋しくなるとは」
「あの子に関わったのがあなたの運の尽きなんですよ水月。よく言うでしょう?人の恋路の邪魔をする奴は馬に蹴られて死ねと」
「フッ、どこまでも嫌味な奴よ。否定はせんさ、好きなだけ恨み辛みを言うがいい」
どんな理由を並べようが時雨の恋路に横入りしたのは事実。
それに対する言い訳を今更する気もないと、嫌味に対してもただ静かに失笑を漏らすだけ。



