自分の為した気まぐれがどれほど残酷な事であったのか今では充分に分かるのに。
気が付いた時がすでに手遅れだったのだ。
無に帰すには命も育ちすぎ、取り巻く情も複雑に絡み合って断ち切れない。
足掻いてみる程予期せぬ複雑さを招くばかりで、まさに今この瞬間にまで連鎖してしまった。
自分達の愛憎の過ちが次世代まで。
六花(むすめ)にまで。
それでもまだ踏みとどまれる位置であるなら、踏み留められる位置であるなら、自分の痛みなど省みず手を伸ばして止めてやりたいと思うのだ。
古き友に。
気の合う良き友であった。
だからこそ、望みを叶える力を貸したのだ。
愚かで哀れな望みだともどこかで思っていたというのに、愚行を眺めて長い暇を潰すのも一興と見逃した。
百夜もまたこの現状を招いた過ちの一つ。
時雨が悪者だと言うのなら百夜も。
それを分かっているからこそ感情的に時雨のみを断罪してはいけないのだ。
はあっ、と吐き出した一息は内側に溜まり始めていた負の感情を消化する為。
敵意を纏う気はないと、改めて冷静な眼差しで時雨と向き合うと、
「……もう充分分かっているだろう、時雨?」
「何をでしょうか?」
「いくら愛した女を複製しようとしても無駄な事。夜音の遺伝子を持ってして生みだした花鳥であっても育つ人格は夜音じゃない。いくら夜音の名を与え愛情を注ごうが、そこにある本当の個人を見ず愛せずじゃ枯れていく」
「………」
「お前の心だってそうだ。本当の意味で報われる事なんてない。お前の求める夜音などいくら求めようが生み出せないのにこれ以上可哀想な生き人形をこしらえてどうなる?」
所詮は堂々巡りの負の連鎖となるだけだと、荒ぶる感情も私情も抜きに友として諭した百夜なりの結論であり、願いであり。
どう抗っても結局は誰もが報われることない虚しい物だと。
何よりも虚しく可哀想な生き物となり果てるのは結局は時雨なのだと。
百夜なりに今出来得る限りの手を時雨に伸ばしたつもりであった。
おこがましく、今更であっても出来る事なら救いになりたいと。



