「無駄死に…か。実に勝手で情のない男よ」
「情が無いなんて心外ですねえ。先に情もなく僕を裏切ってあなたと姿を消したのはあの子の方ですよ?」
「……花鳥はお前を愛していたわ」
「僕もあの子を愛していましたよ、心から」
「お前が愛してたのは今も昔も依り代の奥の亡霊だろう。心から『愛してる』と囁きながらお前のその目はいつだってあの子を素通りする。これでもかと愛しみながら目の前で生きているあの子の事は残酷に殺し続けていたのだぞ」
「……それを残酷なのだとあの子に認識させたのはあなたでしょう、水月?あなたがあの子に余計な情を抱き花鳥と名付け他の愛情なんて物を教えなければ、あの子が僕からの愛情に疑問を抱く事なんてなかった。僕とずっと愛し合っていられたんですよ」
「花鳥は夜音ではないぞ」
「夜音だったんですよ。夜音になるべく生み出した唯一の成功体。それは協力者であったあなたが一番分かっていたでしょうに」
「我ながら阿呆な男の戯言に乗って阿呆に加担したもんだと思っているわ」
分かりきってはいたが堂々巡り。
決して折り合いの見えぬ過去からの価値観と因縁。
そして、所詮は同罪であると百夜自身分かっているのだ。
どれだけ時雨を非難しようがそれら全てが返って突き刺さる。



