それでも、激昂した言葉をぶつけるわけでなく。
「久しぶりだのう。相も変わらず過去の女への妄執に憑りつかれて阿呆を繰り返してるとは…」
「確かに、『久しぶり』というのが適切なんでしょうか?【百夜】という同僚としては毎日顔を合わせていましたが。…やはり、貴方だったんですねえ水月(すいげつ)」
「フンッ、それを疑ってずっと【百夜】に張り付いていたくせに」
「ええ、でも確信はなかったんですよ?姿も違えば名前も違い、偽るにしても水月としてのボロはでない。寧ろ、偽ろうなんて意志は微塵も感じられない」
「そりゃあそうだろうさ。今の今まで僕自身が【水月】であった事を忘れてたんだから」
「……あの子の仕業ですか?」
「クソ生意気な小娘に僕もお前もしてやられたのさ」
「……我々二人をしてやって……無駄死にしましたか」
まるで、再会を懐かしむような言葉を交わしながらの攻防戦。
どうにも状況を完全には読み込めておらず、出方も分からぬ故に百夜の先陣に任せていたソルトだったが。
まるで進まぬ救出劇と見えぬ会話には痺れも切れ始めると言うもの。
一体何の話をしているのか。
誰の話をしているのか。
そんな話よりも六花の救出を。
寧ろ、不意をついて俺が動くか?
なんて、今にも踏み込まんとばかりに心が激った刹那。
それを見事一瞬で気圧すような殺気を百夜の身から感じて硬直してしまった。



