確かにそうだ。
どんな病原も効能も受け付けず出血多量な傷さえも癒してしまう六花の体質。
例え効果を発しようがその持続はものの僅かの瞬く間。
それに異例がない限り、外部からの侵略である自我のリセットとやらもまた然りである筈。
そんな結論に希望を見出しソルトの表情が緩んだ瞬間であった。
「そうなんです。問題は夜音の底知れない治癒能力なんですよねぇ」
緩んだ表情や意識を瞬時に緊張させ直した穏やかな声音は背後から。
この声音に緊張など、ましてや警戒をする事になるなど誰が思っただろうか。
いつだって親身で温かで、向ける笑顔には心底安堵し癒されるとさえ思っていたというのに。
今となっては只々憎たらしい。
信じていただけに悲しく、痛く、腹立たしい。
そんな憎悪を双眸たっぷりに振り返れば、捉えるのはいつも通りなんら変わらぬ微笑みで佇む時雨の姿。
まるで悪びれた様子もなく、何なら何事もなかったような素知らぬ様子で。
思わず、やっぱりこの人は無関係なのでは?と信じたくなるほどに。
それでも、そんな生温い期待は時雨の横に寄り添った六花の姿によって脆く消えた。
懐く様に六花が時雨の腕にぴったりと身を寄せる様には滾らせていた憎悪の情に嫉妬のそれも孕んでいく。
そんな憎悪を念に表情を曇らせているのはソルトだけではなく。
百夜の双眸も静かに怒りを揺らして時雨を捉えるのだ。



