六花の為にも、ソルトの為にもこの事態だけは避けたかったというのに。
結局は叶わなんだ。と、現状に目を細めて悔いを飲み込んでいれば。
「百夜、一体何がどうなってる?自我をリセットって何の話だ?」
「そのまんまの意味さ。お嬢ちゃんの…六花の今まで構築してきた人格が消去されたのさ。そう難しい技でもない。魔術を使える者なら様々な形でそれを成せるさ」
「じゃあ…今の六花は、」
「六花じゃないって事になるね。器は同じだが中身は違う。違うと言うより文字通りリセット。初期化された様な状態なのさ」
「っ……初期化って」
「まあ、でも……まだ絶望するには早いよリッくん」
「………はっ?」
「六花の問題点は外部からのどんな菌も傷も受け付けない特異な体質だってところだったろう?」
「そう…だけど…」
「なら、そんな六花に外部から強制的に施されたリセットなんてやつは永遠に有効なものなのかな?」
「……っ…」
有効であれる筈がないだろう。
そんな含みのある百夜の言葉と笑みはこの最悪の現状では何よりも心強い。
やはり、百夜は百夜だ。
姿こそ変わってはいるが纏う雰囲気はまるで変わらず。
強気で、嫌味で、どこか余裕までチラつかせてみせて憎たらしくも思える。
それでも、だからこそ今この瞬間は何よりも不安を払拭してくれる。



