『百夜…』
「っ……花鳥(かちょう)、」
刹那だ。
百夜が思い出した名を口にした刹那。
ブワッと熱気が吹き上げるが如くの魔力が溢れ、なんの予測も構えもなかったソルトと蓮華は見事吹き飛ばされて床に転がってしまった。
一体何がどうなっているのか。
ソルトらからすれば百夜が何かに苦悩し頭を抱えていた事くらいしか把握出来ていなかったのだ。
なにがどうしてこんな参事になったのかと、困惑に満ちながら体を起こして百夜の居た場所に視線を動かせば。
「………誰?」
煙幕の様な魔力の幕が漂う中平然とその場に佇んでいるのは百夜ではない。
いや、ソルトの見知った百夜の姿ではない。
在るのは子供とは程遠い長身の美丈夫で。
長く透き通る様な白髪と適当に着付けたようや着物を揺らして艶やかにそこに在る。
男のソルトでさえ息を飲むほどの凄艶さである。
近くでも蓮華もまたこの事態に呆けていて。
2人して思わず言葉を失い呆然と渦中の男を見つめていたのだが。
「っ……あんのぉぉぉ、小娘ぇぇぇっ!!僕に呪いをかけるとはいい度胸してんじゃねぇかっ!!」
ひっ!!
と、思わずその気迫にビクッとしたのはソルトだけではなく蓮華も同じ。
美人がキレると恐いってのはまさにこれだろ!とばかりに、目の前のイケメンが憤怒してみせたのだ。



