それでも、何をされたかなんて思考すら既に奪われており、今の六花に出来る事といえば。
「僕もですね、あなたに好かれたいとは思っていないんですよ。欲しいのは貴方の器なので」
変にボヤけ反響する時雨の声を聞き入れるばかり。
後は、嫌だ。と自我が消えていく事への恐怖と、
「ソル……リッ…カ……」
自分の全てである存在の事。
どうしたってそれだけは手放してはいけない。
忘れたくはない。
忘れてはいけない。と、最後まで本能は抗ったというのに。
儚くも六花の意識はプツリと断ち切れたのである。
それでも気を失ったのとは違い、その綺麗な眼は虚にも開かれており。
寧ろいつも以上に澄んで無垢にも感じられる。
そんな透明感は眼だけではなく六花の存在そのものが無垢。
今となってはまるで生きている精巧な人形の様に見えない糸に括られており、意思のなくなった六花に時雨も柔らかな笑みを携えて距離をつめたのだ。
穏やかな笑み。
心から愛おしむ様な表情に所作。
静かに伸ばした指先で六花の頬をなで、そのまま顎を優しい持ち上げ視線を絡め合わせるとまた一笑。



