「はぁ、アホか。出来るかも!なんて一朝一夕にできたら洒落にならんわ」
「え〜、そうかなあ?」
「だから無理だって。なに試そうとして胸に手置いてんだ?」
「ねえねえ魔導士さまあ、相手の力をコピーするのってどんな感覚でしてるの?」
「そうですねえ、コピーと言うよりほんの少し相手の力をお借りしますって類いの物なので……掌に吸い込む感じでしょうか」
「時雨さままで…、ヤル気と説明ひとつでそう簡単にできたら苦労…」
「ソルト、」
「あっ?なん……っ!?」
「……出来ちゃったっぽい?」
時雨から六花へ。
会話のラリーを追って視線を動かしたソルトがギョッと目を丸くし言葉を失うのも無理はない。
驚愕の眼には狼の耳をぴょこぴょこさせている六花がいるのだから。
服の膨らみを見るところ尻尾も生えているのだろう。
へえ。なんて言葉を漏らした際に見えた口内には鋭く尖った犬歯まで。
しかも、変貌を遂げたのは見た目ばかりでないらしく。
「うわぁ、ソルトの世界ってなかなかヘビー。耳はクリアすぎて遠くの音まで拾っちゃうし、嗅覚なんて色々な匂いが混ざりすぎて…。こんなんでよく暮らせるねえ」
「っ……お前、…マジにマジか?」
「ん?何が?ってか言葉おかしくない?」
「いや、規格外におかしいのはお前だろ!初見で出来るとかマジかよ!?」
「わかんないけど出来ちゃったんだもん。流石に完全な狼とはならなかったけど」
「出来ちゃったって…」
実にさらりと言ってのけるがマジに凄い事してみせたんだからな?
なんて、唖然とするソルトなど御構い無し、六花と言えば実に楽しげに未知の感覚を楽しんでしまっている。



