深く関わらぬ間柄であった頃であるなら百夜の発言に無礼だろと焦りもしただろうが。
薬の実験台とされた記憶はソルトの中では実に真新しいもの。
最早時雨の穏やかな笑顔に騙され流される程尊敬すべき上司とは思えない。
とはいえ、本気で危険だと警戒しているわけでもなく、ただ巻き込まれるのはごめんだと遠巻きに流れを見守っていれば。
「相手の力をコピー…」
「ん?どうした、六花?」
「いや、……僕もそれ出来ないかなぁって」
またこいつは突拍子もなく。
この話にどんな興味を覚えたのか。
子供が偶像のスーパーパワーに憧れるが如く、どこか期待の孕んだ双眸をキラキラさせた六花が自分の両手を見つめながらそんな事を言い出すのだ。
可愛いといえば可愛い発想や夢であるのだが、今まで携わっていなかった能力が突然開花して扱える筈もない。
いや、開花する事はあったとしてもだ、いきなり扱えるほど甘い能力はない。
何事にも鍛錬が必要であり、コントロール出来る様な力かもまた別の話。



