時雨もそんな期待に満ちた空気を盛り下げるでも焦らすでもなく、にっこりと微笑みながら、
「では、そうですね…蓮華くん、」
なんて、面々に品定めをするような視線を走らせた後に、なにやらご指名と手招きをしてくるのだ。
どんな理由からの選別だったのか。
選ばれた蓮華も『俺っすか?』なんて小さくも驚愕を見せつつ、そろそろと時雨の手招きに応じていくのだった。
一体何が始まるのか。
一同がポカンと見守っている中で時雨が起こした行動といえば近づいてきた蓮華にトンっと軽く手を添えただけ。
勿論、次の瞬間に見えない力で蓮華がすっ飛ぶなんてアクションはなく。
寧ろそんな様なアクションを僅かにも予想していた面々としては肩透かしというところ。
それをされた蓮華は特に。
えっ?えっ?と音にはせずともキョドキョドと目を泳がせているのがいい証拠。
そんな周囲の反応に時雨と言えばお馴染みの笑顔を浮かべながら次の瞬間には何事も無かった様に茶を啜るのだ。
それには、いやいやいや。とソルトが突っ込みを入れるべく動きかけたのだが。
「っ…えっ?!」
感情のままに動かせたのは声音ばかり。
伴うはずであった身振りは金縛りの如く体が硬直して封じられたのだ。
見えない力で。
それもどこか馴染みのある力で。



