ソルトとしては百夜が携わってくれればサラリと糸口を見つけてくれるのではないかと期待していたばかりに落胆してしまう。
寧ろ、こんな風に煙管さえ吹かさず悩みあぐねているような百夜の姿は初めて見たのだ。
百夜でさえ頭を悩ます六花という生き物はなんなのか。
こちらの悩みなんて御構い無しに今も呑気にスイーツに食らいついている六花にソルトが小さく息を漏らしたタイミング。
「イーターですよ」
「……へっ?」
堂々巡りの迷走が続いていた中の不意の一言。
それにはソルトも百夜でさえも素早く意識を集中させた一声。
今の今まで存在を忘れさせる程物音を立てずであった時雨。
今であっても決して前のめりな姿勢ではなく、穏やかにお茶を啜る姿には本当に今の発言をしたのか?と疑いたくなる程。
それでも、カップを口から離せば、
「多分、…イーターでないかと」
改めてそんな答えを静かに弾くのだ。
「…イーター?」
「はい。意味はそのまま【食べる者】。まあ、魔物でいうなら【食らう者】と称するべきでしょうか」
「知ってるか?百夜」
「……いや、僕の辞書には記録されてないね。どんな生き物なんだい、そのイーターって奴は」
「おや、百夜殿が僕に質問するような瞬間が訪れるとは」
「僕だって知らない事はまだ五万とあるだろうさ。それに知らない事に見栄を張って知ったかぶる程愚かじゃない」
「まあ、…珍しい異色の魔物ですからね。知ってる方が稀でしょう」
「博識なのはよぉく分かったから、さっさと説明願えるかな?時雨殿」
珍しいと言える立場の逆転。



