一瞬の出来事。
止めに入る間もなく六花の白く華奢な手首はメスの切っ先に切り裂かれて今も止めどない鮮血を溢れさせているのだ。
とは言え、切りつけたのは六花本人。
当然六花が慌てふためく事はなく、寧ろ冷静な眼差しで患部である切り口を見つめていて。
真っ先に戸惑いの声をあげたのは、
「っ…まえっ!!何やってんだっ!?腕っ!止血っ!!」
ソルトのコレが正常な反応であろう。
ようやく理解が追いつくと真っ青になりながら六花の姿に手を伸ばしたのだ。
そんなソルトの姿は見事六花の返り血に染まっているのだが気にする筈もなく。
「バカだバカだと思ってたが思ってた以上の大馬鹿かよっ!」
「いやいや、ソルト。そんな取り乱さなくてもこれワザと切りつけて…」
「そんなもん分かってるっ!流石に意味なく公開自殺するような変態じゃねえだろうさっ。しても平気だと分かった上でのこの奇行だろっ?!だからこそ大馬鹿だって言ってんだ!」
「うぇぇ、だって手っ取りばやくて分かりやすいのこの方法かなって……とは言え…。やっぱり痛いね。…大量の出血故の貧血は免れないし…」
「阿保ぉぉぉ!!」
「ああ、でもほら……もうぼちぼち、」
流石の六花でもこれだけの出血となれば貧血になるらしく。
今も血の気の失せた顔で弱々しい声音を響かせていたのだが。
不意に見ろと持ち上げてきたのは血塗れの腕で、促されるま視線を動かせばパックリ開いていた筈の傷口が静かにスッと消え始めるのだ。



