いつもは緩い弧を携えている百夜の口元がスッと消え去ったのがいい証拠。
更には咥えていた煙管を口から離し、灰を捨てるとそのままタバコ入れの上に置いてしまったのだ。
そうして改めて六花を捉えながら、
「『効かない』と『効かなくなった』じゃ話が違う」
「そうなのか?」
「最初からまったく効果を発揮せずであるなら万が一、億が一の薬の不具合とも考えられたけどね」
「お嬢さんの場合一度は薬の効能通り魔女の力を喪失したという事ですよね?」
「えっと…はい。多分喪失していたかと。魔女の香りは完全に消失していたし、投与した瞬間にそれまで継続していた術がとけたのも確認してます。本人も魔力の喪失感と倦怠感を訴えていましたので…な?」
「ねえ、僕まだ食べたりないんだけど」
「っ〜〜六花ぁぁぁ。お前は何しにここに来てんだ!?今真面目な話してただろうが!?」
「え〜、だってこんな甘い匂いの中で我慢とか辛いんだもん〜。ご馳走を前にずっと待てを食らってる犬状態だよ?分かる!?この辛さ!」
「嫌って程分かってるし、なんならその死活問題解決の為にここに来てんだっての!」
こちとら数ヶ月もお預けくらった欲求不満なんじゃボケッ!
なんて、補足のボヤキはソルトの内側で。



