事が事なら上層部や魔導師以外には秘密裏に処理される事案などいくつもある。
これもそんな類に含まれるのでは?と小さな期待をかけて問いかけてみたのだが。
ソルトの問いかけに対してその返答は間髪入れず。
「ないな。…少なくとも僕は知らないね」
「僕も長く魔導師として勤めてますが魔女の特効薬が効かないなんて事態は初めてかと」
「はぁ、だよな」
「魔混じりの抑制薬であるならそれこそ効きに個人差もあるからそんな不具合があっても不思議じゃないが、魔女に関しての研究はそれこそ過去何百年と費やされた末の現状だ。被験体となった魔女の数はそれこそ今まで政府に関与した魔女全てと言ってもいい。特効薬を投与する際にその魔女の因子を登録しサンプル化してもある。それら全てに問題なく作用して初めて特効薬として認可されてるんだ」
「勿論、効能の発揮時間には個人差はありますが、即効性を謳っているこの薬ですからね。基本は分単位で魔女の因子を分解する筈なんですが」
「それらも重々承知なんだよなあ…。承知故に悩ましいっていうか。…ああ、でも、六花の場合は最初こそ魔女の力は喪失してたんだけどなぁ…はぁ」
「……おい、へっぽこ丸、」
「なっ…へ、へっぽこ丸って!」
「そんな重要な事は真っ先に説明してほしいもんだね」
「はっ!?」
「いやいやリッカくん、そこはかなり重要で話もかなり変わってくるのですよ」
「えっ?」
ソルトからしたら何気なく発した再確認に一言。
それでも、どうやらその事実は百夜と時雨には大きな波紋が広がったらしい。



