とにかく、とにかくだ。
愛くるしい言い分にどんなに悶絶しようと誤解ばかりは解いておかねばならない。
この前の様すれ違いはもうごめんだろう?と理性が訴えれば本能もストンと納得して引っ込むのだ。
そうして、今も挑むように見つめてきている六花にクスリと苦笑するとトンッと軽い力で頭に手刀を落すのだ。
「アホ。別れる気なんか更々ねえわ」
「う…嘘だ」
「フッ、まあたそれかよ。今度はどんな理屈で嘘つき呼ばわりだ?」
「だって…」
「うん?」
「だって…」
「なんだよ?」
「っ~~~だって!ソルトってばキス以上の事僕にしようとしてこないんだもぉぉぉん!!」
「っ____」
おぉぉぉぉぉ、
よりによってそこかぁぁぁ!!
その問題かぁぁぁぁぁ!!
他の理由であるのならいくらでもはぐらかしようがあったものの、その問題を突かれるとソルトにとっても目下の悩みであるのだから痛いのだ。
それを真正面からぶつけられた日には…。
あ、やべっ…普通に目が泳いだ。
と、なってしまうのも無理はない。
それでも六花は六花なりに積もり積もった不満であるのだ。
確かにソルトが自分の想いを受け入れ好意を素直に示してくれるようになった。
でも、それ故に余計にチラついて見える一線があって、逢瀬を重ねるごとにどんどんと明確になってくるのだ。



