下から上に押し上げる様に重なってきた唇の拙い事と言ったら。
なのにその拙さや幼さが逆にいじらしく感じられてソルトへの着火剤となるのだから。
口づけも下手であるなら、それとなく跨ってきているつもりらしいそれもソルトからすればぎこちない。
女性関係や駆け引きに長けていたソルトを惑わせられる手練手管など皆無であるようにみえるのに。
「っ…んん__」
攻守交代なんて一瞬の事。
入れ替わってしまえば先程の盛りと勢いなんてあっさりと打ち負かされた六花が、今度はソルトの大人の色香と手練手管の餌食となるのだ。
そりゃもう、六花の攻めとは比べ物になる筈もなく濃厚濃密に。
一呼吸も漏らさんとぴったり押し重なる唇の内側で、貪りつくさんと動く舌先の妖しく長けた事といったら。
六花でなくとも突き崩されて立て直しなど不可能だろう。
そんな口づけの合間にもソルトの指の長い手が六花の首筋から胸元を撫で下がり柔肌の感触を確かめるのだ。
そうしてようやく、
「__っは、はあっ、ソル…」
「煽っといてこんくらいで根あげるんじゃねえよな?」
「っ……」
「大事にしてえって言ったのに……お前って、本当酷い女だな」
涙の膜の張った目でもハッキリと表情も輪郭も捉えられる至近距離。
発せられた響きばかりを拾うなら強気で強引にも感じられる言葉達であるのに。
六花の双眸に映るソルトと言えば、言葉に似合う強気など半分程度。
苦笑に片眉を下げた表情には逆に優しさの方が色濃く感じてしまうのだから。



