「…無茶するな、本気で…泣くぞ」
「ん…ごめんね?でも、前もって言ってたらソルトは多分薬を打つの躊躇ったでしょ?」
「そりゃあ、当たり前だろっ!」
「ほらね、だから黙ってて良かったんだ」
「っ…お前なぁっ…」
「10年だよ?」
「…あっ?」
「僕は10年もソルトに片想いして焦れて悶えてたんだ」
「…六花?」
「それなのに、やっと手に入れたのにこれ以上焦れるなんて堪らないよ。魔女だろうが僕だって普通の女の子だ、好きな人ともっともっと触れ合いたいって感覚は他の女の子と一緒だよ?」
「っ……」
ソルトからしてみれば六花を恋情で想う様になったのは最近と言える筈。
それでも六花からすれば年単位で継続してきた恋情なのだ。
積もり積もった恋情はソルトがいくら盛って訴えようが六花のそれには遠く及ぶわけがない。
「僕は貪欲なんだ。隣に居られたらそれだけで幸せなんてプラトニックを演じる気も我慢する気もないよ」
「六っ…__」
幼い顔立ちにどれだけ大人びた熱情を魅せるのか。
ソルトが自分の陰りの中熱を帯びた六花の表情を捉えた刹那、スッと動きを見せたのは六花の方。
名前を呼び切る隙もなく、ソルトの唇は六花の荒れ知らずの柔らかな感触に食らい付かれていた。



