かなり本気の力を込めていたらしいそれには六花も涙目で頭を摩り、何をするんだと不満の眼差しで睨み上げるのだが。
「ほんっと…、アホかお前っ!!そんな危険性頭にあったんならあんな風に勝手に打つんじゃねえよっ!!アホかっ!!」
「アホって二回も言ったぁぁぁ、可愛い彼女にアホってぇぇぇ」
「アホじゃなきゃ脳足りんか!?」
「ひっどぉぉぉい!!」
「酷くねぇよっ!何サラッと自分の命まで賭けて魔女卒してやがるっ!もし仮に目の前で消滅されたら俺の精神もぶっ壊れるわっ!」
「あっ、寧ろそれ希望で僕の為の廃人ソルトとか本望かも」
「親指突き立てて良い顔してんじゃねぇよっ!」
「ぎゃあぁぁ!ギブッ、ギブッ!DV反対ぃぃぃ!!」
「ほんっと…」
「っ……」
「消えなくて良かったよ…」
掴みかかりにきていると思っていた腕は存外優しい所作で六花の背中を這い。
寄せられるのと寄るのはほぼ同時。
気がつけば六花の小柄な体はすっぽりとソルトに抱き竦められていた。
そうして耳もとで弾かれた『良かった』の響きには今更ながらの不安と心底の安堵が込められているのが痛い程に分かる。



