それでも愛情故の束縛は六花にとって甘さばかり。
魔女でいた時には向けられなかったソルトの愛着を得たのだから脱魔女様様だ。
ここぞとばかりにソルトの執着に浸って甘えつつもだ、やはり自分の体の変化にはまだ違和感を覚えてしまうらしく。
「やっぱり、なんか…体変」
「あっ?体調おかしいか?副作用はあんまりない薬の筈だけど」
「あっ、違う違う。体調悪いとかじゃなくて、寧ろこれが【普通】ってやつなんだと思う」
「気持ち悪いとかあったら言えよ。危険性はないっつっても細胞を激変させる負荷はかかってる筈なんだ」
「本当大丈夫だってぇ。まぁ、でも……思ったよりあっけなく魔女卒したよね。肩透かしっていうか…」
「そりゃあ今の魔導と医療の最良薬だぞ。効かない筈が…」
「いや、効かない云々の話じゃなくて、寧ろ効きすぎて僕が消滅しなかったなって話」
「…はっ!?」
「だってさ、他の魔女ならいざ知らず出生含め詳細不明な僕じゃん?あのクローン説を推したとしてだ、それが魔力によって息吹いていたなら魔力を失った時点で僕は成立しないじゃない?」
「っ……」
「最悪消えるの覚悟に薬打ったんだけど……、あはは、消滅しなくてラッキー。魔力人形じゃない事も解明されたし一石二鳥ってやつだよねぇ」
「っ……あははでも一石二鳥でもねぇよっ!ドアホッ!!」
「っ…痛ったぁぁぁぁぁい!!?」
笑い事じゃねえわっ!と六花の脳天を突いたソルトの手刀は鋭い。



