それでも、大幅興味のない話題の中でも、流石に六花も捨て置けない問題はあったらしく。
「魔女は魔を孕む…ねえ。まあ、やっと諸々合点はいったよ。ソルトの中途半端な拒絶とか、付き合ってからも全く手を出してくれない理由とか、口を開けば『魔女卒しろ!』って小煩かった事も」
「小煩いって、お前なぁ…」
「本当、……ソルトって馬鹿だ」
「お前はぁ、言わせておけばっ…」
そこまで言うか!?と、ソルトが不満を漏らしかけた刹那。
六花が人差し指をピッと動かし、それに合わせて部屋の端にあった棚の引き出しが勝手に開く。
そうして中からフワリと持ち上がったのは注射器と液体の入った小瓶。
ただ、小瓶の中に液体を捉えたのは一瞬で、次の瞬間には液体は注射器に、注射器は六花の目の前にと移動していたのだ。
そんな一連の流れにソルトが何か言葉を挟む間も無くであった。
ようやく、「あっ、」と声を発したのは注射器の針が六花の皮膚を貫いた瞬間。
手など触れていない注射器からみるみると液体は六花の体内に入り込んでいき、最後の一滴まで入り込んだ途端にカランと床に落ちて転がった。
そうしてソルトの目の前の六花も何かの童話の如く、かかっていた魔法がとけて元の幼い少女の姿へと戻ったのだ。
髪の短い、まだまだ未成熟な少女の姿へ。



