治ってる。
あれ程滾っていた血が。
消化不良で身体を蝕んでいた欲求が。
食らいつくさんとする渇望が。
未だ微々たる疼きはあれど、自我を失い暴走してしまう様なそれではない。
充分に抑制出来る程度の満月時の症状のみ。
魔女の瘴気の名残も感じなければ、薬を飲んだ直後の爆発的な興奮も消えている。
今こうして目の前に実に美味しそうな六花を捉えているにも関わらずだ。
「……抱きたくならねぇ」
「っ…!?ひっどぉぉぉい!!」
「あっ、いやいやいや、違っ…そうじゃな…」
「この10年、ソルトに捧げる為だけに体調管理からこの美ボディに至るまで並々ならぬ努力を注いできたのにぃぃぃ。抱きたくないとかっ、ソルトの馬鹿ぁぁぁ!嫌いぃぃぃ!!」
「ぐっ……」
ぐうカワ……。
あ、これ致命傷レベル。
どんだけ俺馬鹿だ!なんて嘘にも詰れんほどクソ可愛いだろぉ!!!!
俺馬鹿万歳。
なんて、誤解もそっちのけに悶えてしまうソルトも最早末期。
今となっては嘘にも六花を拒絶する態度など取れないのだ。



