とは言え、
「やっぱり痕は残ったか」
「魔力たって万能じゃない。しかも人間風情が扱うそれなんてたかが知れてるからねえ。それこそ魔物の中には完全なる治癒能力を持つ者もいるかもしれないけど」
「まあ、別にこれで十分だけどな。動かせるだけありがたい話だ」
別にソルトも傷跡があると不満に思っての一言ではない。
寧ろ思っていたよりかは目立たぬ物に収まったと感心の方が強。
そこに傷があったのだろうと分かるような円形のつなぎ目はあれど動かすのに不自由はない。
指の先までしっかりと神経は通っていて機能は通常通り。
これ以上何を望む事があろうか。
それでも、
「ついでにこの気だるさも治ってくれてたらねぇ…」
「フフッ、そればっかりはねぇ。満月の今日は特に魔の気の方が勝るから。抑制剤を飲んだところで効果は雀の涙程度ってところだし。下手に服用回数増すと免疫も出来て効果が薄れる」
「分かってる。だから敢えて飲まずに唸ってるんだろうが」
ソルトだって薬で収まる物であるならとっくに服用して全回復となっていた筈なのだ。
コレが普段であるなら薬の効果も覿面で迷わず服用している頃だろう。
ただ今日という満月の夜ばかりは服用しても殆どデメリットしか発生しない。



