ソルト自身どう纏めていいのか分からぬ手探りの説明は決してわかりやすいとは言い難い。
しかも、六花の信じ難い幼少期の話など特にどう説明したものか表現に困りながらであったのだ。
それでも耳を傾ける百夜はソルトの拙い説明に不満を漏らすでもなく、そんな話があるかと否定するでもなく。
話を折るどころか時折『成る程』なんて相槌を打って受け止めてくれる。
いつもの様ななにかの片手間ではなく真剣に。
そうして思いあたる話を説明しきってみせれば、
「…確かに、改めてこうして聞くとなかなか規格外な彼女らしい」
ふむ。と、ソルトの話を反芻する様に煙管の煙を含んで吐いて。
まるで煙と相談でもしているかの様な横姿には口を挟む様な事もし難く、ソルトも口を噤んで大人しく答えを待っていたのだが。
「…長い事魔導師と言う職に就いているけど、魔女が魔の気に甘い匂いを覚えるなんて前例は聞いた事がない」
「…そうか」
「それに、魔女と言っても魔法が使えるという点以外は生物学上人間の女。毒に関しても自分に害さぬよう防御は出来るかもしれないが、それを体内に含んで何の影響もないと言うのは驚きだね」
「あっ、でも瘴気に飛び込んだ直後は苦しさを感じたって言ってた」
「つまり、最初こそ毒に中てられたけどすぐに身体が免疫を作るかして順応したか。か、」
「俺にはその辺は分からないけど…。やっぱりそれらの事って普通は…」
「あり得ない。規格外。人としても魔女としても」
「っ…」
わかってはいた。
そんなのは出会った頃から。
それでもこうして改めて他者からの見解を突きつけられるとどうしてか衝撃を覚えてしまう。
それも他でもない百夜の口から。



