いつもの冗談であるのに。
珍しく本気に捉えてそんな行動をとるソルトの姿には百夜も些か興味を引かれたらしい。
それまで咥えていた煙管をスッと口から離すと、百夜の方からソルトの顔を覗き込む程度には興味があったらしい。
「なにか…気になることがあったね?」
「まあ……ちょっと。どっから話していいのかわかんねえけど」
「どっからもなく全部話せばいい。関係あるないなんて後で分別すればいい」
まあ、尤もだ。
何がどこまで関与しての話でどうまとめていいのか。
そんな風に迷うソルトに切り返す百夜の尤もな意見というのか。
普段はふざけてばかりいても肝心な時はこうして大人で理性的な誘導をしてくれるのが百夜である。
今もまるでソルトの冷静を引き出す様にその双眸はまっすぐにソルトの双眸を見つめ射抜いてくる。
その目に見つめられると不思議とそれまでの不調さえ忘れて安堵まで覚えるのだ。
そんなリラックス効果はソルト本人も自覚しており。
まるで暗示みたいだな。
苦痛さえ忘れる安堵で目が逸らせねえ。
そんな事を百夜の藤色の双眸に思っていたのだが。
「……お前の眼もそういや紫だったのな」
「引っかかる言い方だねぇ。『も』って言うと?」
「…六花の眼、普段は青…というより透き通った水色なんだ」
「そう言ってたねえ。澄んで綺麗な水色だって」
「でも一瞬、紫だったんだ。…綺麗な藤色の。それこそ…お前の色みたいな…」
丁度こんな淡い藤色の。



