僕は少し特殊な家系に産まれた。
僕の家族は僕を含めて3人。母親、弟、僕。とてもじゃないけど裕福とは言えるような環境ではなかった。
親は僕が2歳の時に離婚した。父親の不倫が最大の原因だったそうだ。その他にも父は酷い事をしていた。まだ弟が産まれる前、仕事で溜まったストレスを母や僕にぶつけていたのだ。暴力、暴言、母は怯え、僕は泣きわめき、とても辛い時間だった。そして母はそろそろ危ないと思ったらしく、やっとの事で離婚を決意した。そして、通っていた保育園から離れ、転々と色んな場所に行った。転校ばかりで友達を作ることを辞めた時期もあった。でも今はネットがある。だから僕は現実から逃げてネットに自分を閉じ込めた。それでも親はやっぱり学校には行けと言った。高校は行って欲しいと。僕はいやいや行っていた。でも時々怖くなる。僕は嫌われているんじゃないか、いつかいじめられるんじゃないかって。だから僕は人を拒み、家に引きこもるようになった。そして、ネットでのみ僕としての人格をさらけ出すようにしていた。
親から離れて他の人の所へつれていかれて、そこで殺されかけて、散々痛めつけられてきたせいで人が怖くなり、人を拒むようになった。だからネットに逃げた。

でもそれから中学を卒業して、人生は一変した。
僕に、好きな人が出来たのだ。

とても静かで優しくて、綺麗な顔立ちの人。でもその人は…先生であり
「男」
だった。

僕は男だ。だからその人を好きになってはいけない。そう思って必死に堪えていた…
でも、我慢なんて出来るはずなくて…

ある日の放課後…やっとの思いで入れた高校だった為とても成績は悪く、いつもの様に担任の「如月純人(きさらぎあつと)」先生に勉強を個別で教わっていた。いつもいつも夜遅くなって、いつもいつも先生に送ってもらっていた。そんなある日、僕は少し熱があってほんの少しだけ顔が赤くなっていた。その時先生は、僕を保健室へ運び、看病してくれた。その日のことはあまり覚えていなあ…でも、やらかしてしまった事は、はっきりと覚えている。


放課後…

「先生、すみません…ご迷惑を……」

「良いんだよ、あまり無理はするんじゃないぞ、郷香(さとか)」

「は、はい…ありがとうございます」

「大丈夫、俺が心配性なだけだから」

先生はそう言って笑ってくれた…僕はそんな先生がとても、欲しくなってしまった…
そしてこんな事を口走ってしまった…

「先生…あの…好きって言ったら、先生は相手に、してくれますか…?」

僕はハッと我に返り、とっさにはぐらかしたした。

「あ、あの、違くて…これはっその…例えばの話で…す、すみません…ちょっと、熱で頭やられちゃったかな…ハハ…」

すると先生は吸い込まれそうな青い瞳でじっと僕を見つめた。僕は目を逸らせなくなって、真っ赤になった。

「へぇ〜、郷香お前、俺の事好きなんだ
そっかぁ〜なら好都合だ…」

そう言って先生は少し不気味に微笑んだ。僕は少し寒気がしたけどすぐに否定した。

「ちっ違いますって!!そうじゃ…なくって…ですね…あの、そのぉ…」

「ふぅん、否定するのか、なら俺はもう良い。お前にその気が無いならいい。じゃあな、俺は帰る、お前は少し休んでから帰れ、お大事にな」

先生は僕に冷たい視線を向け、背中を見せて言った、僕は初めて思った。もうどこにも行って欲しくない、僕だけの先生であって欲しい…と。
そして僕の手はいつの間にか先生の腕を掴んでいた。先生の口角が少し上がった気がした。
すると先生は、耳元でこう囁いた。

「好きなんだな、俺の事。なら教えてやるよ、俺の全部。」

そのまま僕は先生に押し倒された。
先生の目が少しだけ潤んだように見えた。それから先生はベッドの周りのカーテンを閉めた。そして…先生は僕に優しいキスをしてくれた。

それが僕と先生の秘密の恋の始まりだった。