小学校の卒業式

僕と咲月の別れの日。
なるべくいつも通りでいようって思っていたのに……

「咲月…」
「変、かな?」

咲月だって女の子だからスカートくらい履くだろう。
でも今まで見たことがなかったから…驚いた。

「めぐるくん?」

固まる僕に対して、不安そうに名前を呼ぶ咲月。

「…やっぱり、変だよね」

俯く彼女に慌てて首を横に振った。

「そんなことないよ! 僕はすごくかわいいと思う」
「ほんと!?」

顔を上げた咲月は、ぱあっと明るくなった。

「本当だよ」

少し照れながらも、僕はしっかりと頷いた。


卒業式が終わって、彼女に声をかけた。

「咲月、帰ろう」
「うん」

……毎日歩いた通学路。変わらない風景。

いつもと違うのは、咲月と手をつないでいたこと。
そして、僕の胸が高鳴っていたこと。

今思えばきっとこの時から、
僕にとって咲月は『トクベツ』になったんだ。