「楽しんでほしかった。喜んでほしかった。迷惑じゃなかった?」
「そんなことないよ。逆に気を使わせちゃったなって。……昨日はごめんね」
「気なんか使ってないって~。でも、美緒先輩には、オレ、気遣いはしたいんだ。そのふたつって、同じようだけど、違うと思わない? 気を使うって、なんかヤダよね。気遣いって、大事な人にしか出来ない優しいやつだとオレ思うんだ~。あんま上手くいかないけど」
「そんなこと、ないよ」
「夏が好きなオレと、苦手な美緒先輩。――けどさ、こうやって、夏以外のことでも全然違うオレたちが、お互いの重なるとこを見つけて、得意なほうに任せて一緒に楽しんだりさ、できるのって、いいなって」
「うん」
「美緒先輩が夏ダメで、良かったとこもあるよ?」
「え?」
「紫外線にあんまあたってないから白い首らへんとか超キレイ。サラッサラで艶のある髪の毛とかも~。緑の黒髪って意味、オレは美緒先輩で知ったんだ」
脳ミソに皺がひとつ増えたなんて、眠そうなのに得意げな顔が、ゆっくりと、私の肩にもたれ掛かる。どうやら限界だったみたいだ。当然か。あんなにたくさん準備してくれた。



