バーをあがって 従業員の寄宿舎に戻るとき 

    なんとなく サーフィンスクール4の 前を通ってみた。

    部屋の前には インストラクターの 写真と名前 ・・・・・

    早川 信 の名前の上に カメラから目線をはずし 

    少しうつむいた信くんの顔 

    他の人は とびきりの笑顔なのに・・・・・・・

    でも この写真 かえって信くんのかっこよさを

    アピールしてるよ・・・・・・

  
    思わず 反対側のガラスの壁に寄りかかり 

    しばらくその写真を見ていた



    走馬灯のように 昔のことが蘇る


    幼稚園での遠足 

    レジャーシートを並べて 食べたお弁当

    桜に下 信くんの両親も一緒に

    つぐみの父の料理を笑いながら食べていた光景


    信くんの 身長が大きくなるごとに

    信くんの表情も大人になり 笑顔でいることも少なくなり


    そして つぐみの家が そっと身を隠すために

    家を出たあの日

    あの日の夜 こっそりと両親が身支度をしているのを見て 

    信くんの家の前まで行って 信くんの 部屋を見たら

    真っ暗で ・・・・・・・。

    あの日は  ちらちらと雪が降っていたな・・・・・・

    もたれていた ガラス窓に 目を向ける。

    なんで 夜逃げって 冬なんだろう・・・・


    あ~ もう 私ったら…何してるんだろう

    両手で頬をたたいて

    自分に自分で気合を入れて歩き出した。