「森野さんっ!」



遠くから、雨の音にまぎれて

暁くんの声が聞こえた。



『・・暁くんっ・・
 大丈夫?
 引っぱたかれなかった?
 どこも痛くない?』



「なんでっ・・
 なんでまだいるの・・っ!?」



びしょ濡れの暁くんが

私の前に立つ。



「まさかと思って来てみたけど
 本当にいるとは・・」


『・・って、言ったから』


「え?」


『暁くんが、待ってろ、って言ったから』



暁くんが、しゃんと背筋を伸ばし
濡れた髪の毛を掻き上げた。


そして

メガネを外した―――