クールな弁護士の一途な熱情




「あんたになにがわかるのよ!そもそも旦那が悪いの!仕事ばっかりで魅力もなくて……だから私は、いけないとわかってても不倫相手を選んだの!」

「そんなの言い訳っ……」

「浮気なんてね、される方が悪いの!されたくないなら心を引き留める努力をするべきなのよ!」



頭上から降りかかる彼女の言葉に、この胸がズキンと痛んだ。



……浮気なんて、される方が悪い?

相手を裏切ったのは自分なのに、それでいて開き直って、相手が悪いと押し付ける?



その態度が、言葉が、あの日の彼に重なった。



『……ごめん。俺、果穂のこと選べない』

『けど果穂だって仕事続けたいって言ってたし、結婚とか考えてなかっただろ?』

『そういうところが、あの子とお前じゃ違うなって』



頭がグラグラする。

あの日の衝撃を思い出して、気持ち悪い。

息ができない、苦しい。



「なにしてるんですか」



その時、落ち着いた声が廊下に響く。

顔を上げると事務所の入り口から姿を現した静は、彼女と座り込む私を見て、珍しく怪訝な表情を見せた。



「し、ずか……」



女性は静を見た途端、勢いそのままに詰め寄った。



「やっぱり居たのね!ちょっと、旦那に離婚撤回させなさいよ!子供も返して!」

「そちらの件につきましてはお断りいたします。どうしてもというようでしたらそちらも弁護士を連れてきてください、と何度もお伝えしていたはずですが」



静ははっきりと、厳しい口調で言い切る。



「今日のところはお引き取りください。会社の者にまで危害を加えるようでしたら、警察呼びますよ」



これまで穏やかな物言いをしていたのだろう静の強い言葉と、『警察』という言葉に女性は怯んだようだ。

険しい顔のままその場を逃げ去って行った。


ふたりになり、静はすぐこちらへ駆け寄る。