それから私は、事務作業や掃除など慌ただしく1日を過ごした。
けれどそれでも気持ちはモヤモヤとしたまま、晴れることはない。
16時をすぎ、ひとりになった事務室で頭に浮かぶのは先ほどの『上原さん』の文字だ。
着信履歴を消しても、まだ心に引っかかっている。
……なんの用だろ。
やっぱり、仕事辞めるか戻るかはっきりしてくれって話かな。
向こうからすれば、私が辞めてくれたほうが安心なんだろうけど。
『ごめん、これ以上騒ぎになる前に辞めてくれないか』
考えれば考えるほど、どんどん記憶がよみがえる。
その度、胸が痛くて息苦しさが増す。
「……郵便物、出してこよう」
外の空気を吸って少し気持ちを落ち着けよう。今は所長室に静もいるし、電話番も大丈夫だろう。
そう思い、封筒を手に事務所を出る。
そして廊下に出てエレベーターに乗ろうとボタンを押すと、ほどなくしてドアが開く。
するとそこから現れたのは痩せ型のショートカットの女性だった。
あれ、この人どこかで見た覚えが……。
そう思いながら彼女と目があった瞬間、思い出す。
この人確か、前に噴水のところで静に怒っていた女性だ!
怒鳴りバッグを振り回していた姿を思い出してゾッとする。
どうしてこの人がここに?
もしかしてまた静に話をしに?
どうしよう、戻って静に教えたほうがいいかな。
そう考えていると、彼女は私の首にかかった名札に目を止める。



