「けどさすが、弁護士先生はモテるんだね」
「みんな『弁護士』って肩書きに惹かれてるだけだよ。弁護士なんて、恨み買うことも多いのにね」
静は特に浮かれる様子もなく、睫毛を伏せて小さく笑う。
「けど例えどんなに美人から泣きつかれても、俺は依頼人を恋愛対象になんてしません」
「どうだか。そのわりにはデレデレしてたけど」
あぁ、また。意地悪い言い方になってしまう。
なんでだろ。静がモテようが、抱きつかれようが、そんなの私には関係ないはずなのに。
なんでこんな態度、とってしまうんだろう。
すると、突然背後に彼が近づく気配がする。
後ろ髪を指に絡めるようにそっと触れられるのを感じて、胸がドキリと音を立てると同時に全身が緊張した。
「随分つっかかるけど、もしかしてヤキモチ?」
「な、なに言って……」
「安心して。好きな人以外興味ない」
静は耳のそばでそう囁くと、私の横髪にそっとキスをひとつ落とした。
彼の行為とその言葉に思い出してしまうのは、以前静が言っていたこと。
『俺は今でも、入江のこと好きだけど?』
あんなの、からかっているにすぎないとわかってる。
今もただ、私が反応するから試しているだけで。
元彼女、高校時代の同級生、それ以上の感情はないってわかっているのに。
胸は強くときめき、揺れる。
「私まだ仕事あるから!」
こみ上げる熱に耐えきれず、カップをのせたトレーを手にすると私は部屋から逃げ出した。



