クールな弁護士の一途な熱情




「体引き離してちゃんと断ればよかったのに」

「ああいう人は自分から触ったら余計騒ぐから。逃げるに限る」

「とかいって実は満更でもないんじゃないの」



どうしてか、ちょっと嫌味っぽい言い方になってしまいながらなにげなく静へ目を向ける。

すると、彼のワイシャツの襟に肌色の汚れがついているのが目に入った。

きっとファンデーションだろう。先ほどの女性が抱きついたときに触れてしまったのだと思う。



「襟、ファンデーションついてる」

「えっ、うそ!新品のシャツなのに」



右襟を指差す私に、静はそこを慌てて手ではたく。

けれどしっかりついてしまっており、はたいただけでは落ちそうにない。



リキッドファンデーションかな。それなら……。



「ちょっと待ってて」



私は静にそう言うと、一度部屋を出て給湯室へ向かう。

そしてティッシュを濡らし、そこにハンドソープを含ませたものを手に再び静の元へ戻った。



「ちょっと失礼」



静の前に立ち、襟に先ほどのティッシュを当てて、それから乾いたハンカチでトントンと叩いて油を浮かせる。

濡れた跡は残ったけれど、それさえ乾けばファンデーションは綺麗に落ちているだろう。



新作ファンデーションを試用するたびに、何度こうして汚れを落としたことか。

その時の経験がこうして活かされるなんて。



「よし、あとは乾けば大丈夫」

「へぇ、すごい。洗濯しなくても落ちるんだね」

「ファンデーションは油だから、洗剤で浮くの」



そう言いながら顔を上げると、静の顔はすぐ目の前にある。

思っていた以上に近づいてしまっていたことに気がついて、私は慌てて二歩下がった。



ち、近かった……。

汚れを落とすのに無意識に近づいてしまっていた。

なのに、意識した途端恥ずかしくて、またドキドキとしてしまう。



そんな自分を見られないように、彼に背中を向けコーヒーを片付けながら話題をそらす。