「はぁ……体が重い」
静とふたりで食事に行った翌日、火曜日の朝。
私はぐったりとしながら、自宅の洗面所で顔を洗っていた。
昨夜は、お腹いっぱい食べてしまったうえに飲み過ぎた。案の定軽く二日酔いだ。
それに加え、気まずさもあってさらに体が重くなる。
タクシーの中では酔いと眠気で頭の中がぐちゃぐちゃだったけど、今朝起きて思い出した。
私、静の前で上原さんの名前呼んだよね……!
最悪だ。よりによって、元カレの肩に寄りかかって、他の元カレの名前を呼ぶなんて。
しかも、ほんの少しとはいえうっかり泣いてしまったりもして。
お酒の力って恐ろしい……。
……まぁ、だからといって静が特に気にすることもないと思うけど。
私が泣こうが、誰の名前を呼ぼうが、静には関係のないことだ。
気にする理由なんて、ない。
それもそれで、またどこか寂しく思うのはどうしてだろう。
はぁ、とため息交じりで顔を洗い終え、身支度を整える。
服を着替えて、髪を巻いて、メイクをして……仕上げに口紅を塗ろうとメイクボックスを見た。
そこには今日も、赤色ばかりが並んでいる。
結局まだ、私は赤色の口紅ばかりを塗っている。
けどこれは未練じゃないこともわかってる。