クールな弁護士の一途な熱情





それから私と静は、高校時代の思い出話や同級生の話を中心に2時間ほど話し続けた。

だけどその間お互いに付き合っていた時のことを話すことはなく、まるであの2ヶ月間がなかったかのように思えてしまった。



「ありがとうございましたー!」



食事を終え、店員の元気な声に見送られた私たちは、店を出て大通りを歩く。



「ふう、食べた食べた」

「美味しかったね。また今度、壇さんたちとも来たいな」



……なんて一見普通に話してはいるけれど、実は結構酔ってしまった。

だって、静がときめかせたりするから。

その気持ちをごまかそうとついついお酒に逃げてしまい、気づけば結構な杯数を飲んでいた。



顔にはあんまり出ない方だから静には気づかれていないと思うけど……。

だいぶふわふわしているし、タクシー拾って帰っちゃおう。



そう思っていると、静はちょうど通りがかったタクシーに向かって手を挙げ、停車させた。



「入江、今実家住みだったよね。ちょうど俺の家の途中だし、送ってくよ」

「えっ、でも」

「いいから。乗って乗って」



静に流されるように、タクシーの後部座席に押し込まれる。

そして静も隣に乗ると、ドアがバタンと閉じられた。



静が運転手へ行き先を伝えると、タクシーはゆっくりと夜の横浜の街を走り始める。

多くの人や車が行き交う街を、タクシーは慣れた様子で丁寧に抜けていく。

車の心地よい振動についうとうととし始めた私に、静はそっと手を伸ばし、自分の肩へ私の頭を抱き寄せた。