クールな弁護士の一途な熱情




それから数時間後の、19時。

定時を過ぎオフィスからはひとり、またひとりと社員たちが帰って行く。



昼間とは打って変わってすっかり静かになったフロア。その端にある小会議室には、私と上原さんの姿があった。

けれど、そこで行われるのは仕事の話などではなく、深いキスと抱擁だった。



いつもみんなに優しい言葉をかけるその唇は、今は一心に、私の唇に吸い付く。



「ん……」



そっと離れた互いの唇からは、熱い吐息が漏れた。



そう、上原さんは私の上司であり、恋人だ。



ずっと憧れていた彼から、気持ちを告げられたのはちょうど2年前の春のこと。

飲み会の帰りに送ってもらう道中で、彼から『好きだ』と言われた時は純粋に嬉しかったし、ふたつ返事で頷いた。



うちの会社は社内恋愛禁止ということはない。

けれど同じ部署で毎日顔を合わせ働く中で、恋人同士と公言することで周りに気遣われたり仕事に支障が出ることは避けたい。

そんな上原さんの意見から、私たちの関係は秘密にしている。



付き合ってそれなりの時間が経つし、私も今年で30歳になってしまったし、正直なところそろそろ結婚も意識している。

けど、急かして引かれたりするのも嫌だし……。と、こちらからは切り出せずにいる。



すると上原さんは、私からそっと体を話すと、なにか言いたげにこちらを見つめる。