クールな弁護士の一途な熱情




ところが、その日の夕方のことだった。



花村さんは旦那さんから連絡が入り、子供が突然高熱を出してしまい病院へ行ったと聞いて、心配だからとひと足先に帰って行った。

じゃあ三人で行こうかと話していたところ、ほどなくして壇さんのスマートフォンが鳴り……。



「えぇ!?これから急遽旦那と離婚の話し合いをする!?わかりました、今から行きますから!」



手短に通話を終えた壇さんは、スマートフォンをポケットにしまいながら申し訳なさそうにこちらを見た。



「本当にごめん!今から依頼人のところ行かなきゃいけなくなっちゃった!」

「仕方ないですよ、また日を改めて……」

「ううん、せっかく予約したし、割引券もあるし!ふたりで行ってきて!」

「えっ」



し、静とふたりで、ごはん?

その言葉に戸惑う私に、壇さんは割引券を手渡すと、バッグに荷物を詰めてバタバタと事務所を後にした。



その場に残された私とたまたま事務室でファイルを探していた静は、お互いチラっと目を合わせる。

さすがの静も、元カノとふたりでご飯は気まずいよね。



「大丈夫?別に、今日なしでも……」



気を遣ってそう言いかけた、けれど静は小さく首を横に振る。



「いや、せっかくだし行こっか。予約もしてもらっちゃったし」

「えっ……いいの?」

「もちろん」



その言葉は少し意外で、快諾してもらえたことに驚きながらも嬉しくなる。



静とふたりでご飯だなんて、付き合ってるときですらも行ったことがない。

ふたりで出かけたのも、一緒に海に行ったことと花火大会に行ったくらいだ。



……不思議な、感じ。

恋人だったあの頃より、元恋人の今の方が距離が近づいている気がする。