「いいわね、賛成。伊勢崎先生は大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「よし、じゃあ決定!」
そして私の意思を示すより先に話がまとまってしまった。
「ちょうど居酒屋の割引券が今日まででさ、これ使っちゃいたくて」
「率先して言いだしたかと思えばそういうことだったのね」
「まぁまぁ。言いだしっぺとしてちゃんと予約もしておくからさ」
壇さんと花村さんの会話を聞きながらも、胸に浮かぶのは、いいのかなという小さな戸惑い。
短期のバイトって話をしたばかりなのに。
……だけど、限られた時間でも、仲間だと言ってくれているようでうれしい。
緩みそうになる口もとをぐっとこらえていると、隣で静がぼそりと呟く。
「にやけてるねぇ」
「えっ、うそ!顔に出てた!?」
隠せてると思ってた。
咄嗟に両手で両頬をおさえる私を見て、静はくすくすと笑った。
「……いい人たちだよね。花村さんも、壇さんも」
「そりゃあ俺が選んだうちの弁護士ですから。悪い人なわけがないでしょ」
自信満々に言うその言葉は、冗談のようで本気にも聞こえる。
「けどそれは、入江がちゃんと仕事に取り組んでるからこそだとも思うけどね」
「え……」
私、が?
そんなことを言われるとは思っておらず少し驚く私に、静は優しく笑う。
それって……褒められてるってこと、かな。
私の仕事を、花村さんたちも、そして静も見てくれている。
嬉しい。
静のひと言ひと言が、胸の奥をくすぐった。



