花村さんも壇さんも、ふたりとも年上ということもありお姉さんといった感じでなにかと親切だ。
それもあって、いっそう仕事がやりやすいのかもしれない。
そのまま待っていると、少ししてから事務室のドアが開けられた。
「お待たせ」
「よっ、待ってました!」
花村さんがトレーを手に現れると、壇さんの元気な声が響く室内には、紅茶の香りがふわりと漂う。
「頂き物のお菓子があったから、せっかくだしそれも食べちゃいましょ」
そう言いながら花村さんは、それぞれの前に赤い紅茶が注がれた花柄のおしゃれなティーカップと、クッキーが盛られた小皿を置いていく。
おいしそう……。
壇さんがさっそく紅茶を飲むのを確認してから、私もあたたかいカップに口付けた。
口の中でダージリンティーのさわやかな味が濃くふわりと広がる。
「おいしい……!」
「でしょ?花が淹れる紅茶は風味もよくて味もしっかりしてて、最高なんだから」
「ってどうして都子が自慢するのよ」
花村さんは照れたように言うけれど、確かにこれは壇さんが自慢したくなるのもわかる。
「すごいですね、自分で家で淹れるのとは全然違う……」
「元々紅茶が好きでね、ここでも飲みたくて給湯室に自分のポットと茶葉のコレクションを持ち込んじゃったの」
道具も、淹れ方も茶葉も、全てこだわっているのだろう。
ほのかな甘みとあたたかさが、冷房で少し冷えた体にじんわりと沁みた。
なんて贅沢なティータイム……。
そうしみじみと味わっていると、花村さんもカップに口をつけながら言う。



