クールな弁護士の一途な熱情




「む、無理無理!弁護士事務所の事務なんてやったことないし!」

「大丈夫、きちんと教えるし特別難しいこともないから!テストで赤点ばかりだった入江でも出来る仕事だから!」

「悪かったですね、いつも成績悪くて!」



よくそんなところまで覚えてる。むしろ忘れてほしい……!



「業務は多いけど慣れれば簡単だし。それに残業なしの週休二日、時給も言い値で出す!」



静はそう言って、頷くまで離さないとでもいうように肩を掴んだまま。

確かに好条件……。だけど、すんなりと首を縦には振れない。



「……でも、私もいつ復職するかもわからないし」



仕事を辞めるか続けるかも決まっていないし、いつまで迷っているつもりなのかすらもわからない。

そんな不確定なことだらけの中で軽々しく『やります』とは言えない。

けれど静はそれでも頷いてくれる。



「本業に戻るまでの短期でもいいよ。それに、バイトのひとつでもしていたほうが親御さんも安心するんじゃない?」



うっ……確かに。

ダメ押しとでも言うかのように、その言葉はさらに痛いところを突く。