静は、私が今働いていないことなどわかっていたのだろう。
意地悪い言い方でさらに問う彼に、私はそれ以上の言い訳も出てこない。
そうなの、長い有給なの!と言い張る?
それとも少し早い夏休みとでも言う?
いや、なにを言っても彼の冷静な瞳には全て見透かされてしまいそうだ。
……それに、映美にでも探りを入れられたらどうせバレてしまうだろうし。
そういろいろと考えた末、私は観念したように小さなため息をひとつつく。
「……いろいろあって休職中なの。だから、今は実家に住んでる」
「へぇ、ってことは今はニートなんだ」
「休・職・中!」
無職じゃなくて休職中!似てるようで違う!
映美も静も、みんなして失礼なんだから!
小さなプライドから強く否定するけれど、静は眉ひとつ動かさない。
「でも仕事してなくて暇してるってことには変わりないでしょ?」
「……まぁ、そうと言えばそうだけど」
確かにそう言われてしまえばその通りだ。
すると静はなにかに納得したように頷くと、突然私の肩をガシッと掴む。
「じゃあ、俺のところにこない?」
「え?」
俺のところって……?どこ?
意味がわからず首を傾げる私に、静はこちらをまっすぐ見つめたまま。
「今うちの事務所で事務員のバイトを募集してるところでさ!業務が溜まってるから今すぐ人手がほしいんだ」
うちの事務所ということは、ここ、つまり弁護士事務所の事務員というわけで……。
いやいや、そんなの無理でしょ。私はぶんぶんと首を横に振る。



