「巻き込んで本当にごめん。俺がもっと気をつけてれば、入江もこんな目に遭わなかったのに」
申し訳なさそうに深々と頭を下げる、その姿が相変わらず真摯な彼の性格を表すようだ。
元々怒る気もなかったけれど、そこまできちんと謝られるとこちらが申し訳なくなってしまう。
「いいよ別に。静が悪いわけじゃないし、ぼんやり歩いてた私も悪いし」
お互い様というようにへへ、と笑ってみせると、静は少し安堵したように小さく笑った。
「そういう言い方、変わってないね。入江らしい」
「そうかな?」
「うん。高校の頃もよく、そうやって相手をフォローしながら笑ってたじゃん」
高校の頃も、なんて……もう12年も前のそんな些細なことを覚えてくれているのかな。
どうしてか、それが少し嬉しい。
その感情が顔に出てしまわないようにぐっと堪えていると、静はふと思い出したように言う。
「けど、入江こそなんてあそこにいたの?都内でOLやってるって聞いたけど」
その問いかけに、心臓がギクリと嫌な音を立てる。
不思議に思うのも当然だ。
今日は平日、月曜日。しかもこんな真っ昼間にOLが明らかに仕事中ではない格好で出歩いているのだから。
けれど、それでも私はなんてことないフリで誤魔化す。
「た、たまたま、有給取れたから地元でも散歩しようかなって」
「へぇ。そういえば他の人から、つい先週も入江が駅前歩いてるの見たって聞いたけど?随分長い有給なんだねぇ」
「うっ……」



